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空はよく晴れ、降り注ぐ日の光が眩しい。

輝夜【かぐや】は洗濯物を入れた籠を手に外に出て空を見上げ、目を細めた。

この同じ空の下で今も戦が続いているとは、とても信じられない。

輝夜が両親と共に小さな家で暮らす村は、もう大分前にまほろばの帝に従う意向を示していた。

戦乱とは程遠く、人々は毎日を穏やかに過ごしている。

それでも遠くの地では、光の名を掲げた軍が平定の為に戦っていると聞く。

少し前に先帝が倒れたりして国は荒れたようだが、それでも宮があるまほろばから遠く離れたこの地では、それも口伝えに聞く話でしかない。

それはそうだろう、何しろこの村は。

輝夜は軽く息をつくと歩き出した。

後ろで緩く束ねた長い髪が、黄金色に輝く。

此処へ来たばかりの頃は、この髪と拾われたという生い立ちから随分馬鹿にされたり苛められたりしたものだ。

輝夜はこの村の生まれではない。

今から十年程前、村はずれの竹林の中で倒れているところを竹を取りに来ていた今の父親に救い出されたのだと後で聞いた。

数日眠り続けて目覚めてからは、それ以前の事は何も覚えていなかった。

誰も輝夜が何処で生まれたのか知らない。

本人も知らなかった。

ついこの前の、満月の夜までは。

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