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川原に集まっている村の女達と挨拶を交わして、輝夜は水に籠から出した衣を浸した。

清く流れる水に触れるだけで、心が洗われるような清々しさがある。

だから毎朝の川での洗濯はとても好きな習慣だ。

「輝夜、何か良い事でもあったの?何だか楽しそうだけど」

声を掛けられて顔を上げると、同じように洗濯に来た村の娘と目が合った。

「いえ、何も無いわ。ただ、今日も水が綺麗だなって思っただけ」

「そうなの?本当にそれだけ?」

別の娘も会話に入って来て、輝夜は目を瞬いた。

「他に何があるの?」

「決まってるじゃない、恋よ」

「私もそう思ったの。輝夜ったらまるで想い人が出来たみたいに、幸せで落ち着かないって顔をしているもの」

二人の娘は手を動かしながら、すぐに激しく盛り上がった。

もうそろそろ婿を迎える年頃になって来ている。

話題と言えば恋の話ばかりなのも仕方の無い事だろう。

輝夜は会話に加わらず、そっと微笑んだ。

此処で、この村で大人になり好きな人と家庭を持ち、両親を大切にしながら暮らす。

そんな叶わぬ夢を見た時もあったけれど。

もう潮時か。

暖かな、しかし儚い夢を見るのはもう終わりだ。





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