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高千穂に着く頃から、理由も無く胸の高鳴りを覚えていた。

ふと視線を上げて自分が向かう方向の空を見上げると、途端に胸が苦しくなる。

恐れにも似た感覚が、鼓動を早くする。

何故なのかは自分でも分からない。

此処はまほろばではないというのに、どうしてだろう。

こんなにも胸が騒いで、居ても立ってもいられなくなるのは。

そんな思いを抱えたまま輝夜が高千穂の村に入ると、まず目に映ったのは不安そうな顔で身を縮めながら生活している人々の姿だった。

何にそんなに怯えているのだろうと視線を巡らせて、村を見張るように立つ役人を見た。

(領主の手下ね)

輝夜は役人の目に止まらぬように建物の陰に身を寄せて、その様子を観察した。

数は一人、手に鞭を持って厳しい目つきで村人達を見ている。

村人は足早に道を行き、役人に頭を下げてはすぐに家の中に入る。

そこには笑顔も会話も無く、村は静まり返っている。

領主の陰口を言う事さえ許されていないという噂は本当だったらしい。

きっとこうして見張る事により、村人達が集まって反乱を起こそうというような考えを元から絶とうとしているのだ。

輝夜は込み上げて来る怒りを堪えて、しばらくその様子を見守った。

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