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そんな中、一人の子供が勢い良く駆けて来た。

そのまま速度を緩めずに役人の前を通り過ぎようとする。

「おい、子供!止まれ!」

自分の方に見向きもせずに行こうとしたのが気に入らなかったのか、役人は無理矢理子供の腕を掴んで止まらせる。

「お前は、領主様への感謝や敬いの気持ちがないのか!領主様の命を受けた俺への礼を欠くとは、そういう事だぞ!」

「でも、母ちゃんが!」

子供が逃れようと暴れながら叫ぶ。

「母ちゃんが病気なんだ!早く薬を貰って来なきゃならないんだ!」

「黙れ!」

怒鳴り声と共に、子供に向かって鞭が振り下ろされる。

「……っ」

輝夜は思わず飛び出し、子供を抱き締めて鞭から庇った。

硬い鞭が容赦無く輝夜の背中に打ち当てられる。

輝夜はその間黙ってじっと耐えていた。

「……これで少しは分かっただろう」

やがて気が済んだのか、役人が手を止めて言った。

「領主様に逆らう気持ちを見せれば、お前達も痛い目に遭う事になる」

いつの間にか集まって来ていた村人達に向かって続ける。

「それが嫌なら、大人しく従っていろ」

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