10
すぐに家に帰る気にはなれず、ひかりはただ足を動かしていた。
焦っても駄目だと分かっている。
でも……でも。
『こんな俺が……』
幸福になって。
どうか心から笑える日が。
その時不意に何かにぶつかり、ひかりは我に返って立ち止まった。
「あっ、ごめんね。ぼーっとしてて」
ぶつかってしまったらしい幼い少女に、慌てて声を掛ける。
少女は顔を上げてにっこり笑った。
「うん、大丈夫。有り難う、お姉ちゃん」
そう言った少女を、ひかりは思わず見詰めた。
今朝、洗面所の鏡に映った自分の姿と目の前の少女が重なる。
『これから色々大変だと思うけど……』
不意に頭の中に響いた声に導かれるように、少女の頭に手を置く。
「これから……これから色々大変だと思うけど、頑張ってね」
少女は不思議そうに首を傾げたが、すぐに笑顔に戻った。
「うん!ばいばい、お姉ちゃん」
駆け去って行く少女に手を振り、ひかりは大きく息を吐き出した。
『頑張ってね』
頭の中に確かに響いた、あの声は。
「……っ」
思わず額に手を添える。
心を埋め尽くすような雨の音がする。
体中に、重く響く。
それに押し潰されるように、アスファルトに膝をつく。
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Reservoir Amulet