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ひかりは泣きながら笑った。

「嬉しくて、泣いてるの」

「そ、そうなのか?」

「うん」

頷いても、勇は困ったような顔をしていた。

それを見ていたら、何だかおかしくて暖かな気持ちになった。

ひかりは勇の腕を取って言った。

「有り難う。凄く嬉しい」

誰も自分を知らなくて、自分も自分を知らなくて。

でも誰かが自分を覚えていてくれるなら。

居場所になってくれるなら。

それは生きている事の証だ。

強くなれる力だ。

「ああそうかよ。そりゃ良かったな」

勇は素っ気無く言い、さっさと先に進む。

ひかりも隣を歩きながら見上げる。

「そういえば。やっと私の名前、覚えてくれたね」

「何の話だ?」

「もう、さっき言ってたじゃない!」

「そうだったか?」

ひかりが拳を振り回して攻撃して来たのを、鞄でガードする。

「どうして、そう変なところでひねくれてるの?」

「全く、うるさい奴だな」

勇は息をつき、鞄を肩に掛け直した。

「ほら、さっさと帰るぞ。夕村ひかり」

ひかりは驚いたように勇を見詰めたが、すぐに嬉しそうな笑顔を浮かべる。

「フルネームじゃなくて、ひかりで良いのに」

「…………」

勇の反応に構わず、腕を掴んで続ける。

「ね。私、今夜は勇の肉じゃがが食べたいな」

「別に良いが」

「ほんと?そうと決まったら、早く材料を買いに行こ!」

引っ張られるままに足を速める。

目に映った夕焼けは赤く眩しく、道路には二つの影が長く伸びていた。





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