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沢山の想いを込めたら、貴方の胸に響くだろうか。

二人だけの夢のようなこの時間が、ずっと続けば良いのに。

永遠に続けば良いのに。

歌を紡ぎながら、そう願う事を止められない。

けれど、覚めない夢など無いように。

どんな時間もやがては終わる。

曲が終わり、その余韻も消えて行く。

最後の音の名残が完全に静寂に飲まれてから、エンデュミオが拍手をした。

歌に聴き入ってくれていたと分かる表情にほっとして、セレネは一人きりの観客に頭を下げる。

「やはり貴女の歌は良いな。とても優しい気持ちになれる。貴女はきっと、優しい心の持ち主なのだろう」

エンデュミオは赤い瞳を細めて言い、改めてセレネを見た。

「セレネと言ったな。貴女はあの街の娘か?」

「いいえ。私は旅をしながら歌っている者なんです」

「旅の、歌人……」

はっと息を詰めて繰り返した途端、エンデュミオの顔が苦しげに歪んだ。

荒い呼吸をしながら、自分の服の胸元を掴む。

「エンデュミオさん?大丈夫ですか!?」

慌てて体を支えようとしたセレネの手を、先程の穏やかさからは想像出来ない激しさではねのける。

「……っ、私に、触れるな!」

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