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あれから数日が経った。

そろそろ次の街へ向かう頃だ。

しかし、セレネはまだ決心がつかずに留まっていた。

すぐに発つよう言われたが、このまま会えなくなってしまって良いのか。

苦しんでいた彼が大丈夫なのか心配だが、あの態度を思い出すと森へ行ってはいけない気がする。

通りに立って歌っていても、いつしか目はエンデュミオの姿を捜していた。

こんな所では、多分会えないだろうと思うのに。

何処までも甘美に捕らわれる。

これ程に支配されるのが、誰かを想うという事なのか。

溜息を洩らして宿へと帰った時には、日が暮れて暗くなっていた。

宿の女主人は、セレネの姿を見てほっとしたような顔をした。

「ああ、良かった。貴女はご無事で」

「え?何かあったんですか」

いつもと違う様子を感じて尋ねると、相手は表情を曇らせた。

「実は、また行方不明になった娘さんがいて……」

「行方不明?」

「用があって、夕方頃にちょっと街の外に出たっきり帰らないそうなんですよ。此処にいないか訊かれたんですけどね」

話を聞いている内に、何故か胸騒ぎを覚えた。

それは次の言葉を聞いた途端に、更に激しくなる。

「森に惑ったんじゃないかって、ご家族が心配していましてね」

一瞬、眩暈がした。

呼吸さえ出来ない位に、何かが体の中を駆け巡ったような気がした。





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