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「人を狩るだけのただの魔物となり果てる位なら、死んだ方が遥かにましだ。……頼む。私を、殺してくれ」
迷っている時間さえも残されてはいない。
でも此処で彼を殺す事が正しいなんて、どうしても思えない。
自分でも気付かない内に震えていた腕を、手を伸ばしたエンデュミオが掴んだ。
指が食い込む程強く握られて、荒々しく引き寄せられる。
「早くしてくれ、セレネ」
首筋に寄せられた唇から漏れる吐息が髪を揺らす。
「貴女まで、殺してしまう前に」
牙の感触を肌に感じる。
「殺してくれ。私の最期を歌う、旅の歌人……」
僅かな痛みと共に、溢れ出した血が流れるのが分かった。
正しいなんて、思えない。
愛しい人を殺す事が救いになるなんて、今はとても思えない。
それでも、信じようと思った。
自分にこの剣を託した、彼の言葉を。
別れも最期も、決して終焉ではないと。
これが救いに繋がるという可能性を。
(私は、この人を救いたい……!)
それだけは、本当だから。
セレネは短剣を握る手に力を込めた。
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Reservoir Amulet