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涙が溢れて止まらなくて。
熱く苦しい感情が胸に迫ってどうしようもなくて。
もう何も言えないから、その代わりに。
言葉の代わりに、少しでも伝わるように。
貴方に出会えて良かったと。
幸せだと。
溢れる想いの欠片でも、届くように。
セレネはそっとエンデュミオの唇に口付けた。
何て、哀しい事実だろう。
初めての口付けが、血の味しかしないなんて。
初めて好きになった人を、この手で刺す事になるなんて。
けれど、身が裂かれる程に辛くても。
長い長い間、一人きりで。
自分自身を責め続けていた優しい人に。
こんなに優しい人に出会えた事が不幸だったなんて、どうしても思えないから。
唇を離し、泣きながら微笑む。
「……エンデュミオさん。貴方の長い夜は、もう終わりです」
だから、今はどうか。
「永獄は、終わりです。どうか……安らかに」
彼の体が灰と化して行くのを見ながら、祈りを込めて続ける。
「今は眠る事に……暫しの安息を得て下さい」
最後を歌おう。
彼の苦しみの最後を。
長き永獄の終わりを。
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Reservoir Amulet