02


口ずさむ旋律は、もう何度繰り返したか分からない。

柔らかな日射し、青い空。

咲き誇る花の香り、揺れる緑。

日々幾つもの哀しみが生まれて行くこの世界には。

きっと同じだけ歓びも生まれている。

どんな悲劇を見て来ても、信じていられる。

世界は美しい。

誰かを想い愛して生きて行く事は、素晴らしい。

髪が軽く引っ張られるのを感じて、視線を落とす。

膝を枕代わりにして眠っていた恋人が目を覚ましていた。

「あ……ちゃんと渡せたの?」

「ああ」

微かに笑って髪から手を離し、体を起こした彼の瞳が陽光を受けて輝く。

宝石のような綺麗な赤色に。

あまりにも綺麗過ぎて、見詰められる事にまだ慣れない。

「びっくりしていたでしょう?」

「そうだな。それでも彼女は言っていた。救いたい、と」

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