03
今でも不思議だと思う。
叶う筈の無い恋だったと。
二人寄り添う未来は何処にも無かったと。
そう思っていたのに。
こうして一緒にいられる。
日の光の中、笑い合える。
あの時出会った彼の言葉は真実だった。
別れも最期も、決して終焉ではないと。
「……貴方が会って来た私は、ちゃんと役目を果たせるかしら」
手を引かれて立ち上がりながら呟くと、確信の込められた返事があった。
「私はそう信じている。彼女はとても優しくて、強い人だからな」
繋いだ手を放さずに歩き出す。
眩しい光に目を細めながら、空を見上げて口を開く。
「不思議ね。遠い時の向こうを生きた私が、貴方を貫いた短剣と歌をずっと大切にしていて。それは様々な人の手を渡り口伝えに歌い継がれて……今の私の元まで届いた」
「そして貴女が口ずさんでいた歌で、私達は再び出会えた。長い時を経て」
「今でも忘れないわ。すれ違った貴方が突然振り向いて、声を掛けて来た時の事」
思い出して笑顔を浮かべると、恋人は珍しく狼狽えた表情をした。
「確かに、あれは自分でも唐突だったと思う。もう少し段階を踏むべきだったのかもしれないが、あの時は焦ってしまって」
- 49 -
[*前] | [次#]
しおりを挟む
ページ:
Reservoir Amulet