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「貴方は、どうして……」

思わず言いかけて止め、改めて口を開く。

「もう遅いですから、そろそろ休んだ方がいいですね」

「うん、そうだね。長く話しちゃってごめん」

「いえ。お休みなさい、五十嵐さん」

壁の向こうの至聖に丁寧に挨拶をすると、息を飲むような気配があった。

やがて、穏やかな返事がある。

「……お休み、華原さん。良い夢を」

こういうセリフをさらりと言えてしまうのは、彼らしくもあり。

良く似ている人を思い出させもした。

二人共、良く似ていても違って。

違っているけれども似ていて。

不意に胸を掻き乱すけれど。

人はいつだって、目に見えないものを信じたくて。

泣いて惑って、傷付いて。

その過程で指の隙間をこぼれ落ちなかったほんの僅かを。

手のひらに握り締めながら生きて行くのなら。

もう既にすり抜けてしまったものへは還れないのなら。

いつまでも縋らず、前を向かなければ。

幻想に生きていた輝く日々は過ぎ去った。

だから、もう俯いてばかりはいられない。

彼が戦うと言うのなら、自分も過去と戦おう。

決別しよう。

甘く苦いあの日々に、今決別の刃を。





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