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しばらくの間、返事は無かった。

やがて、至聖の諦めに慣れた声が聞こえて来る。

「俺、昔から至高に勝てた試しが無いんだ。勉強もスポーツも、いつだって至高は俺の先を軽々と進んでて。だから俺は偽物なんじゃないかって思ったんだけど」

「そんな……!」

反論しかけた言葉は、思いがけない強い声で遮られた。

「でも、そんな俺でも譲れないものがあるんだ。大抵の事なら諦めて来た俺が、初めて譲れないと思ったものが。だから初めて、戦おうって決められたんだ」

それが何かと訊くのは躊躇われた。

だから少し黙った後、壁の向こうの至聖に語り掛ける。

「分かりました。何か私に出来る事があれば協力きますから。遠慮なく仰って下さい」

「有り難う。君も遠慮しないでね」

「はい?」

何の事か分からずに聞き返す。

「いつだって、君の思う通りに選んでいいって事」

「……はあ」

よく分からないまま曖昧に頷くと、至聖が満足そうに言った。

「そう、それでいい。君はいつも、自分に正直でいればいいんだ」

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