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もう誰にも、自分にも、偽物だなんて思わせない。

人は懸命に、時に愚かしく思える程の感情を抱きながら。

泣きながら笑いながら生きて行く。

ただそれだけで、誰かの胸を射抜く事もあるのだと。

その煌めく感情が、誰かの心に強く焼き付く事もあるのだと。

彼女が教えてくれたから。

生きて行けるだろう。

今ならば、誇らしく自分の生を。

「はい」

微笑みながら頷く真宵の頬に、一筋の涙が伝った。

悲しみだけではない、様々な感情が混ざった一雫は、何と美しいのだろう。

手を伸ばしてそれを拭える事に、この上ない歓びを覚える。

「これから、何処へ行こうか」

「何処でも構いません。貴方と一緒なら」

「うん」

どちらからともなく、手を繋いで歩き出す。

訪れた穏やかな日常は、きっとこれからも続いて行くから。

二人寄り添いながら、何気無く価値ある日々を。

生きて行こう。

その先に、きっと優しい未来があると信じて。





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