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「……これも駄目ですか。絞りたての100%ですけど」
「あ、ううん。有り難う、頂くよ」
慌てて受け取ったグラスの中のジュースには、僅かにオレンジの粒が浮かんでいる。
「華原さん、わざわざ作って来てくれたんだ?」
「大した手間ではありません。ミキサーにかけただけですから」
「嬉しいよ、有り難う。うん、美味しいね」
甘酸っぱいジュースを一口飲んで言うと、真宵は表情を変えずに頷いた。
「それは何よりです」
そして至聖が持っていた空のグラスを受け取り、また三人の方へと戻って行く。
よく気が付く彼女としては、一人離れていた存在が気になり、義務的に声を掛けたというところだろうか。
それでも買って来たジュースではなく、わざわざ作って来てくれたなんて。
何だか、まだ信じられない。
氷で冷えたオレンジジュースを口に運んで、その甘くて酸っぱい味を確かめる。
こんな味を、こんな気持ちをよく知っていると、至聖は思った。
その、苦々しくもいつまでも鮮やかに瑞々しい。
忘れようとしても忘れられない程、色鮮やかな。
一度捕らわれたら、もう逃げられはしない。
張り巡らされた糸のように、絡み合う鎖のように。
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Reservoir Amulet