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「そうだよ。一目見て、全てを奪われた。この女性しかいないと思った。だけどその人は絶対に俺のものにはならないから……。だから密かに焦がれるしかない。それなのに、他の誰かと付き合っても仕方無いだろ?」

籠に盛られたみかんに手を伸ばしつつ、悠也が尋ねる。

「よっぽど美人だったんだ、その人」

「綺麗な人だよ。一瞬で焼き付いて、離れなくなった。鮮明に鮮烈に、俺の全てを支配し続けて離さない」

「……軍に入るより、詩人にでもなった方が良かったんじゃないのか、お前」

燎は少し呆れたように言った。

「すっかり陶酔しきってるな。そんなに言うなら告白でも何でもすれば良いんじゃないか」

「いいんだよ。俺は彼女の幸せを祈るだけで充分だ。ほんの一時でも、残像の甘い陶酔に浸っていられるなら。近付けなくても、彼女の瞳が俺を映す事が無くても、もう充分なんだ」

心の何処かで求めているのは否定出来ないけれど。

でも今語った気持ちに偽りは無い。

この恋は、一生叶わない。

初めて目にした時から彼女はもう、手の届かない場所にいたのだから。





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