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「よし、華原が見ててくれるなら安心だな!」

明らかに他人の状況を楽しんでいる燎の言葉に、卓も満足そうに同意する。

「うむ。私としても、部下の無実はしっかり証明したいのでね。柿崎君と雪村君も、華原君に協力してくれたまえ。仲間だからと容赦するな。それが彼の為だ」

「はい。頑張れ、至聖」

悠也はいつもの無表情のまま励ましたが、実は面白がっているのがよく分かった。

「……頑張るよ」 

力無くそう答えたものの、何をどう頑張ればいいのか分からない。

冷たい手錠を掛けられた手に目を向けて、鎖で繋がる細い手首へと視線を動かす。

先程からこちらを見ようともしない、整った横顔。

憮然としたその表情に、思わず溜息を洩らす。

まさかこんな事になるとは、正直予想外だ。

彼女がどんな意図を持っているのかは、まだ分からないが。

人の心は複雑で、いつだって一筋縄では行かないから。

何処へ向かって行くのかも、まだ不明だ。

白い横顔から目を逸らして、瞼を下ろす。

鮮明に浮かぶのは、忘れられない人の面影。

長い髪をなびかせて、空を見上げていた。

それは、消える事は無い想い出の残照。





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