プリズム.02


壁に手をつきながら進む長い廊下の果て。

そこに近付くだけで心がざわめく。

覚えてはいないけれど、体が拒否する。

そんな馬車に続くドアに、一人の男が立っている。

「……貴方は」

「来たか。マイヤ・セレイン・ジェス」

本名を呼ばれ、ポケットに手を入れたままで微笑んで返す。

「お久し振りですね。都市庁長官、譲刃猛殿」

この都市の支配者は、その言葉に笑みを浮かべた。

「大した女だな。以前会った時もそうだったが、私相手に怯む事無く応じるとは」

「貴方なんて、恐れるに足りませんから」

強い口調で、きっぱりと言い放つ。

「貴方は小物に過ぎません。この都市を統べる能力も、人を治める能力も無い。今だって、この都市を動かしているのは秘書官の司さんでしょう」

「そう。貴方など、私の手駒に過ぎません。お父さん」

都市庁長官の後ろのドアが開き、司が現れた。

(……こんな時に)

二人に悟られないように唇を噛む。

表には出さないようにしているが、まだ体調も良いとは言えない。

この状態で、この二人を。

特に司を、相手に出来るだろうか。

けれど退く訳には行かない。

何とかして此処を凌がなくては。

顔には出さずに、思考を巡らす。

どうやって、此処を凌ぐか。








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