狂った針が時の記憶を刻む.15


低い声を出してから、いつもの調子に戻って口を開く。

「そろそろ戻るか。仕事も残ってるだろ」

「そうですね」

長い階段を上る途中で振り向くと、駅へと向かう舞夜の後ろ姿が見えた。

「…………」

ゆっくりと視線を戻す。

確かなものは何も無い。

今もただ立ち止まり、幾つもの嘘に背を向けているのだろうか。

灯ったように見える光も、いつか失われるものなのだろうか。

そうなのだとしても。

例え全てを閉ざしたままでも、進み続けなくてはならない。

ポケットの中に入れた手を握り締める。

何としても見付け出す。

罪にまみれたこの手で見付け出し、壊してみせる。

その為に、自分は生きているのだから。

全てを再び正しく廻す為。

幾度失敗しようとも、どれだけ血と罪にまみれようとも。

見付け出す、必ず。

寄せては返す果てしの無い波のように、底の見えない深い海のように。

人の心の深さを知っているから。

この命尽きるまで、前へ進む。





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