夢の終わり.16
今でもまだ、傷は疼く。
刻み込まれた傷は、何度も繰り返し熱くこの胸を責め苛む。
あの日から、ずっと今も。
「春日舞夜は存在しない……」
しばらく黙り込んだ後で、我に返ったように要が口を開く。
「一体、どういう意味です?」
「言葉通りだよ。春日舞夜という人間の、この都市に来る前の経歴は全て偽造だった。そういう疑いを持って調べなければ分からない程、精巧に偽造されていたよ。別人に成りすますという目的でも無ければ、あそこまでやらないだろうね」
ファイルを繰りながら、鎮真が目を上げずに言った。
「そういう意味では、この都市は便利だろうな。身分証で全てが管理されている故に、それさえ上手く偽造する事が出来れば別人として住む事も可能だ。……お前達も知っているだろう?」
「しかし、何の為にそんな事を……」
要の言葉に、鎮真は少し悲しげな目をしたまま何も言わなかった。
少ししてから、海斗が真剣な表情を崩さずに口を開く。
「それは分からないけど、身分証を偽造するなんて一般人には無理だ。それに俺が調べても、彼女の正しい経歴は全く手繰れなかったんだぜ?名前も年齢も偽っている可能性が高いのにさ」
「それ位の事はやれる。彼女ならな」
鎮真は息をついてファイルを閉じ、続ける。
「あの時も彼女は厳重なセキュリティーをくぐり抜けてたった一人……。真実の為に都市庁に乗り込んだんだから」
黙って聞いていた要が目を見張った。
「それは、まさか……」
「そして俺が、彼女を殺した」
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