記憶の海.16
「え?此処って翡翠先生の家だったんですか?」
皆を見回しながら続ける。
「私も此処で、一緒に?」
驚きの連続に付いて行けないマイヤの隣で、シズマが微笑む。
「マンションじゃ、お前の身に何かあってもすぐに対応出来ないだろ」
「都市庁を相手に取ると言うのに、女性の一人暮らしなど危険ですからね」
真剣な表情で、要も頷く。
「でも、あの……」
「大丈夫だよ。要に何かされそうになったら、大声上げてくれれば助けに行くから」
「海斗じゃあるまいし、僕がそんな事をする訳ないでしょう。君こそ、変な気を起こすんじゃありませんよ」
いつの間にやら住む事は決定事項になっている。
マイヤが困ったようにシズマを見上げると、暖かな微笑みが返って来た。
「宜しくな、マイヤ」
その瞳に吸い込まれそうになる。
深過ぎる色に、もう戻れない。
こんなにも優しくて暖かくて居心地が良くて、自分には許されない許されないと思うのに。
もう戻れない。
だからそっと微笑み返して答えた。
「はい」
貴方の優しさに吸い込まれる。
気付いたら戻れない。
もう戻れない。
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