一人よりも.02
この広い屋敷での生活も、大分慣れて来た。
マイヤは庭で洗濯物を干し終え、ふと良く晴れた人工の空を見上げた。
いつまで、こんな日々が続くのだろう。
こんな穏やかな日々が。
考えても仕方の無い事を、時々考えてしまう。
自分の手で選び取った道を進むと決めた。
想い出を全て捨て去っても、本当の自分を斬り捨ててでも掴みたいものがあったから。
それでも、不安はふと押し寄せて来る。
理由も無く泣きたくなる時もある。
人は一人でも生きて行ける、けれど。
「……?」
不意に足にふわふわと柔らかいものが触れるのを感じ、視線を下ろす。
「あ、こんにちは」
視線の先では子犬がしっぽを振りながら足元をくるくると走っている。
しゃがみ込み、そっと頭を撫でる。
「よしよし、元気ですね」
そうしながら、ふと思い出した。
そういえば、シズマは犬が好きだった。
子犬を見たら、歓ぶに違いない。
立ち上がり、屋敷の中に入る。
広い廊下を歩いて、シズマの部屋へと向かう。
「シズマさん?」
ノックをしてから覗き込んだが、そこにシズマの姿は無かった。
今日は外出する予定は無いと言っていたが、何処にいるのだろう。
それからしばらく辺りを捜したが、何しろ広過ぎる。
あちこち歩いて、しまいには今自分が何処にいるのかも分からなくなってしまった。
深く息をついて座り込む。
大分慣れたと思ったのに、家の中で迷子になるなんて情けない。
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Reservoir Amulet