玉響


いつから、こうして戦い続けているのだろう。

もう自分でも分からない。

たった今斬り捨てた妖魔が朽ち果てるように消え去るのを横目で見てから、木々が繁る山の中を歩き出す。

月の光も届かない夜の山でも、慣れてしまえば自由に動けるようになる。

人の住む地に下りる事もあるが、山や林の中の方が見付け易い。

妖魔は今のところ、人気の無い場所に現れる。

人の意志が生み出す怪物だが、その大半は幽霊のように彷徨うばかりだ。

実際に人に害を成す程のものではない。

そうなったなら、いよいよ。

傾く世界の危うさが増している証だ。

歩む木々の間に、小さな水の流れを見付けて足を止める。

今夜は此処で体を休める事にして、腰を下ろす。

手を水につけて口に運ぶ。

こうして喉を潤すのも、もう随分と久し振りのような気がした。

現れる妖魔を片っ端から倒す為、怪異の情報を得ては移動と戦いを繰り返す。

人里に下りるのは情報を仕入れる時と、どうしても必要な路銀を得る為に働く時だけだ。

誰とも関わらず生きて行くのが、自分には相応しい。

いつか遠くない未来、人知れず倒れるのだろうから。

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