玉響


「ええ、勿論。全ての事には意味があり、価値があるわ。貴女が彼を夢で見て、追い掛けて来た事にもまた。もう、新しい未来は動きだしているのよ」

「行くのなら、急げ。妖魔の動きが活発になればなる程、歪みは大きくなる。世界の理が乱れる。荷葉はそれを止める為に戦っているのだからな」

飛龍は何かを思い起こすように続ける。

「何事も、一人でやるのには限界がある。あいつにそう言って、叱ってやれ」

見てしまった未来。

あの運命を変えるのは難しいかもしれない。

それでも。

それでも、このまま何もせずにあの夢が現実になるのを待っているなんて出来ない。

傍らに転がったままだった刀を取り上げて、柄をきつく握り締める。

もう既に、何かが変わり始めているのなら。

顔を上げ、微笑む二人に告げる。

「有り難うございます。私、あの人を追い掛けます」

「それが良いわ。後の事は私達に任せて。どうか貴女の道筋に光がありますように」

「武運を祈っているぞ」

「本当に有り難うございます。御恩は決して忘れません」

見送る飛龍と輝夜に深く頭を下げ、向きを変えて歩き出す。

夢で見てしまった未来。

あの結末を変えるのは難しいかもしれない。

そうだとしても。

その結末から続く未来を変えられるなら。

諦めはしない、絶対に。








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