落葉


傷口に薬草を当てて布を巻く。

怪我の手当ても、もうすっかり慣れた。

「有り難うございました。本当に助かりました」

丁寧に頭を下げる旅人に向かって微笑んで言う。

「いいえ、大した事はしていません。道中、気を付けて下さいね」

そう言い残し、縛り上げた盗賊を立たせて歩き出す。

一番近くにある街で盗賊を引き渡し、代わりに幾らかの礼を受け取った。

以前、偶然盗人を捕まえた事から成り行きで始めたのだが、今ではこれだけで旅を続けていられる。

人とは、慣れればたくましくなるものだ。

一人で旅をする事にも、野宿にも、冷たい土の上で寝る事も、もうすっかり慣れた。

時々不意に寂しくなる事が、無いと言えば嘘になるけれど。

街から出て山道に入り、しばらく行った所で立ち止まる。

薙ぎ倒された木に、抉られた土。

戦いの跡だ。

此処を通ったのだ、彼が。

立ち尽くし、静かに微笑む。

後を追う日々、決して共にはいない日々。

自分は追い掛けるだけで、追い付く事は選ばなかった。

繰り返し夢で見る未来。

あの光景に、自分はいない。

今側にいる事は、そこへ至る道筋を変えてしまう。

それを、きっと彼は望まないだろうから。

今は敢えて、孤独を選ぶ。

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Reservoir Amulet