落葉
妖魔の骸が消えるのを見届けて、太刀を鞘に収める。
水を吸って重くなった髪をかき上げ、ふと空を見上げた。
降り出した雨は、止む気配を見せない。
激しさを増して空から降り注ぐ雨は、これまで影を歩んで来た道筋を掻き消すようで。
他の時には得られない静けさを与える。
だからだろうか。
遠く捨て去って来た筈の想い出が、不意に胸を締め付ける。
『私も一緒に戦わせて下さい』
もう、とうに過ぎ去った事だ。
今更思い返して何になる。
自嘲気味に、そう考えるのに。
『私をお側にいさせて下さいませんか、荷葉さん』
ほら、まただ。
彼女の声が、響いて来る。
あの眼差しが胸に迫る。
あれから幾つ季節が巡ったのか。
振り返る事もせずに、ひたすら戦い続けて。
もうすぐだと、何処かで感じていた。
果ての見えない戦いの終わりが見えて来た。
だからだろうか。
影を行く旅路、その中で。
唯一つ輝いていたもの。
何よりも美しく尊い想い出。
それが今、不意に甦る。
見送る彼女を後にしたあの日を。
鬼と成る生の中で、思い返す事など無いと思っていたのに。
降り注ぐ優しく冷たい雨の中で。
どうしてかあの眼差しを、声を想っている。
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Reservoir Amulet