追憶


あれから近くの桔梗の住むアパートへと移動した。

交代でシャワーを浴びて服を替え、今は熱いお茶を飲みながら。

二人寄り添って、心地良い沈黙に身を沈めている。

突然甦った記憶はあまりにも切なく苦しくて。

未だ語らう言葉を見付けられない。

ただ、これだけは分かる。

かつて、一人きり闇の中にいた昔の自分にとって。

ひたすら真っ直ぐで輝いていた彼女の存在が、どれ程救いとなったか。

哀しませてしまったと、今も縋るように握られた手から伝わる。

今度こそ、守れるのだろうか。

こうして再び出会い、共に戦う今は。

「…………」

隣にいる桔梗が溜息を洩らし、そっと肩にもたれて来た。

心地良い温もりが、懐かしい夢に揺蕩う心を溶かして行く。

かつて何も語らずにいた自分だったから、内に秘めていた熱情が。

激流のように駆け巡るから。

あらゆるものを後にして、想い出さえも許されないと斬り捨てて。

出会い、見送る彼女を後にした日の事を、自ら鬼と成る生で思い返す事など無いと。

そう思っていたのに。

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Reservoir Amulet