怪異
時刻は午後八時過ぎ。
新幹線のホームへ向かう改札口前は、多くの人が行き交う。
その様子を見ながら壁にもたれ、一人の女性を待つ。
待ち人、結崎桔梗と出会ってから、一週間程が経っていた。
約束通りに彼女に連絡をしたのは、今日の休憩中の事だ。
メールを送ってしばらくして、同じく休憩中だったらしい桔梗から電話があった。
彼女は駅前の大型書店で働いており、帰りは八時頃だと言う。
自分もその時間には仕事が終わりそうだった為、八時半に駅で待ち合わせるようにした。
この場所ならば雑踏に紛れて、知り合いに見られる事も少ないだろう。
此処へ来る際に桔梗が働いている書店の前を通ったら、店の物である紺色のエプロンを身に付けた彼女がレジで接客をしているのが見えた。
本が好きで、本屋で働く。
いかにも彼女らしいと、ぼんやりと思った。
懸命に働いている姿は、何処から見ても普通の娘なのに。
『じゃあ、これからも貴方のお手伝いが出来ますね!』
自ら戦いに身を投じようとするのは、何故なのだろう。
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Reservoir Amulet