怪異
考えながら駅の入り口に目を向けると、走って来る一人の娘が見えた。
視線を巡らせて小さく手を振るこちらに気付くと、真っ直ぐに近付いて来る。
「すみません、お待たせしました」
「走って来なくても良かったのに……。お疲れ様です」
「賢木さんもお疲れ様です。今日は宜しくお願いします」
そう言って笑顔を浮かべた桔梗は黒いコートにチェックのマフラーという格好で、学生といっても通じそうな幼さがあった。
メイクも控えめで黒髪だから、益々そう見えるのかもしれない。
こんな普通の娘が、どうして自ら戦おうなんて思うのだろう。
改めて浮かんだ疑問を口には出さず、微笑を返して口を開く。
「では、早速行きましょうか。駅の駐車場に車を停めてありますので」
「あ、はい」
並んで歩き出しながら、すれ違うカップルを見てふと思う。
そういえば、こんな所を女性と歩くのは初めてだ。
これから怪異の調査をするという目的が無ければ、もう少し楽しいのかもしれないが。
日ごとに冷たさを増す外気に目を細め、賑やかな雑踏に息をつく。
自分の役目から目を逸らすつもりは無い。
この世界の理を乱す存在と戦い続ける。
影に生きて、守り続ける。
- 23 -
[*前] | [次#]
しおりを挟む
ページ:
Reservoir Amulet