怪異


考えながら駅の入り口に目を向けると、走って来る一人の娘が見えた。

視線を巡らせて小さく手を振るこちらに気付くと、真っ直ぐに近付いて来る。

「すみません、お待たせしました」

「走って来なくても良かったのに……。お疲れ様です」

「賢木さんもお疲れ様です。今日は宜しくお願いします」

そう言って笑顔を浮かべた桔梗は黒いコートにチェックのマフラーという格好で、学生といっても通じそうな幼さがあった。

メイクも控えめで黒髪だから、益々そう見えるのかもしれない。

こんな普通の娘が、どうして自ら戦おうなんて思うのだろう。

改めて浮かんだ疑問を口には出さず、微笑を返して口を開く。

「では、早速行きましょうか。駅の駐車場に車を停めてありますので」

「あ、はい」

並んで歩き出しながら、すれ違うカップルを見てふと思う。

そういえば、こんな所を女性と歩くのは初めてだ。

これから怪異の調査をするという目的が無ければ、もう少し楽しいのかもしれないが。

日ごとに冷たさを増す外気に目を細め、賑やかな雑踏に息をつく。

自分の役目から目を逸らすつもりは無い。

この世界の理を乱す存在と戦い続ける。

影に生きて、守り続ける。







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