怪異


紙を伏せて膝の上に置き、自分を落ち着かせるように口を開く。

「ありがちな話ではありますね。誰もいない校舎から人の声がするとか、物音が聞こえるとか……。どの辺りが気になったんですか?」

前に会った時にも感じていたが、桔梗は頭の回転が早いと思う。

いや、それだけではない。

自分の感情を後にして、冷静に状況を整理出来る。

まるで、直面している事を常に達観しているような。

「賢木さん?」

不思議そうに呼ばれて我に返る。

「ああ、すみません。気になったところでしたね」

気を取り直して話を続ける。

「僕も最初はよくある話だと、あまり気にもしていなかったんですが……。去年廃校になったばかりで、まだそんなに経っていないのに噂が広まり過ぎているのが気になりましてね。考え過ぎなら、それで良いんですが」

「…………」

桔梗は黙り込んだまま、ハンドルを握る横顔を見詰めた。

この人は、こうしてどの位の間戦い続けて来たのだろう。

この人は、どうしてこんなに強い意志で戦い続けるのだろう。

いつか、話してくれる時が来るのだろうか。

穏やかで親切な、その奥に秘めた心を。






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