恋
客が去った後の食器を片付け、テーブルを拭く。
もう少ししたらまた混み出すが、平日の午後は比較的空く時間だ。
カウンターの向こうにある厨房に戻ると、同じレストランで働く女性従業員達が話し掛けて来た。
「あの、賢木さん!今日、仕事18時まででしたよね?」
「良かったらその後、飲みに行きませんか?他にも友達が来るんですけど」
「賢木さん、人気あるんですよ!一緒に来てくれたら、みんな歓ぶと思うんです」
やれやれ、またその話か。
毎回断っているのに、良く懲りずに誘って来るものだ。
内心うんざりしながらも、笑顔を浮かべる。
「すみませんが、今日は人と会う約束がありますので、僕は遠慮しておきます。皆さんで楽しんで来て下さい」
「えー、人と会うって、まさかデートですか?」
「ええ!本当に?」
内心溜息をつきながらも、笑顔でかわす。
「違いますよ」
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Reservoir Amulet