神立


夕方から、急に雨が降り出した。

店内は雨宿りに駆け込む客で一時混んだものの、今はそれも落ち着いた。

時計を見上げ、軽く息をつく。

桔梗はそろそろ仕事が終わった頃だろうか。

今日は早めに終わると言っていたから、また待たせてしまうのを申し訳無く思う。

会う理由が妖魔に関する怪異の調査とはいえ、やはり会えるのは楽しみになる。

以前に海水で濡れてしまった桔梗を自宅に招いてから、二人の距離は更に近くなった。

休みが合えば妖魔に関係無く一緒に出掛けたりもするし、お互いの部屋を行き来する事にも抵抗が無くなった。

レストラン等で妖魔についての話し合いは、やはりしにくいし人目もある。

誰か知り合いに見られて妙な噂が立つのも面倒だ。

だから最近ではどちらかの部屋で食事をするのが普通になった。

初めて彼女の部屋に行った時にはあんなに戸惑いがあったのに、慣れというのは恐ろしい。

今では泊まる事だってあるのだから。

こんなに近い距離に誰かがいるのを心地良く思うなんて。

そんな自分がいるなんて、信じられないけれど。

ただ、問題は。

まだ彼女の気持ちが分からないだけでなく、自分の気持ちさえ伝えられていないと言う事だ。

何度か機会を探した。

けれど何かがつっかえているように。

何かを忘れているように。

言葉が出て来なくなる。

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