戦いの夜.30


怒鳴られているのに、何故だろう。

「ですから静嵐は、もっと自分を大切にして下さい。今度同じような事を言ったら、私もう二度と静嵐に力を使わせませんから。そうして私が戦います!」

何故それが不快ではなく、むしろ。

「……それは、困るな」

「それなら、これからは『俺なんかどうでも良い』みたいな投げやりな事は考えないで下さい。分かりましたね?」

妙に嬉しくて、懐かしいのだろう。

同じような事を、ずっと昔に言われたような気がする。

「静嵐?聞いているんですか?私、怒っているんですよ」

「あ、ああ……。分かった、努力する」

静嵐がそう答えると、霄瓊はまだ少し不満そうにしながらも一応は頷いた。

「約束ですよ。自分を大切にする事を忘れないで下さいね。……私がいなくなっても」

最後にぽつりと付け加えられた言葉に、一瞬胸が大きく揺さぶられた。

それは最初から分かっていた事で、そうなるのを待ち望んでいた筈なのに。

どうしてだろう。

いつか来る別離の事を考えた瞬間、不意打ちのように心が揺さぶられた。





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