クリスマス.02
普段よりも恋人同士で寄り添う姿が多い街を歩き、古本屋のドアの前まで来て立ち止まる。
「じゃあ静嵐、着きましたから。有り難うございます」
隣の背が高い横顔を見上げて言うと、静嵐は表情を変えずに体の向きを変えた。
「……終わったら呼べ」
そう言い残して立ち去る後ろ姿を見送って、霄瓊は小さく溜息をつく。
何だか静嵐の様子がおかしいような気がする。
何となく元気が無いような、沈んでいるような。
やはりまだ、体が本調子ではないのだろうか。
けれど、心配するのも許してくれない人だから。
その事実が、こんな日は特に痛い。
自分の体も傷だらけで、動く度に痛む。
しかし、それよりもずっと。
痛むのはこの心か、置いて来た筈の時の向こうの傷か。
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Reservoir Amulet