鎖.19
目の前に横たわるのは、冷たい静寂。
その究極の暗闇に触れ、次に目覚めて悟った。
遂に起きる事の無い眠りについたのだと。
苦しみも痛みも無い安息に、ほっとしなかったと言えば嘘になる。
ただ一つ、心残りがあるとするなら。
こんな自分に、毎日のように会いに来てくれたあの人に。
別れも告げず、感謝も伝えないままになってしまった事だ。
せめて悲しまずに、忘れてくれれば良いけれど。
離れた場所から幸せを願う事しか出来ない筈だったのに。
不意に強く呼び寄せられた。
それは抗えない、魂全てを捧げた強さで。
その意味を知った時、嬉しかったのか悲しかったのかは自分でも分からない。
だから自分も全てを賭けて関係を繋ぎ直して。
何も知らないままの幸福を願うのは、当然の事なのだ。
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