聖女の祈り.02


現代に戻って来てからは、何も変わらない日常が再び流れ出した。

黒曜の店での仕事も変わらず続いている。

「霄瓊さん、お茶が入りましたよ」

「あ、はい。有り難うございます」

客のいない店内で、カウンター越しに向かい合って湯飲みを手にする。

「………あの、店長さん」

少し経ってから、霄瓊は躊躇いがちに口を開いた。

「静嵐は無意識に正反対の私を嫌っているようですけど、貴方は違うんですか?」

「僕は彼と違って大人ですからね。幾ら本能が拒絶しても、可愛いお嬢さんを嫌ったり出来ませんよ」

「……はあ」

分かったような分からないような顔で曖昧に頷くと、黒曜がふと慈しむような瞳をした。

「それに貴女がしようとしている事を思えば、そんな感情を飛び越えてしまいますよ」

「店長さんが考えている程、大した事ではありません。当然の事ですから」

霄瓊は湯飲みを起き、悲しげに微笑む。

「きっとあの人は、もっと苦しんだでしょう。だからこそ、今のような生き方をしていてはあの人自身を傷付ける事になる」

だからこそ、壊すのだ。

静嵐を傷付ける者は、例えそれが彼自身でも自分でも許さない。

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