聖女の祈り.03


黒曜は不意にカウンターから身を乗り出すと、両手で霄瓊の頬を包み込んだ。

「前に言いましたね、僕は貴女の味方だと。それは今も変わらない、本当の事です」

「店長さん……?」

間近で見る瞳が、黒く深く揺れる光を放つ。

いけない、そう思った時には既に体が動かなかった。

(静嵐……)

思い浮かべた名前は、音にならないまま唇で消える。

吐息が触れ合う程近くにある黒曜の表情は、意識を失う瞬間まで悲しげだった。

だから彼がこれからしようとしている事が、混濁する思考でも想像出来て。

(静嵐……お願い。貴方はもうこれ以上……)

傷付かないで。

何も思い出さないで。

新しい貴方を。





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