深海の心.02


本の埃を払ってきちんと並べ直し、窓を拭く。

時折思い出したように常連客が立ち寄るだけの小さな古本屋の仕事は、もう体が覚えている。

だからつい、頭では別の事を考えてしまう。

窓から見える澄み渡った青空を見上げて溜息をつくと、不意に後ろに人の気配がした。

「どうしました、霄瓊さん。その若いのに溜息なんてついて」

「あっ、店長さん。すみません」

慌てて振り向いた霄瓊は穏やかな笑みを浮かべる男に、急いで姿勢を正す。

「別に構いませんよ。今日も暇ですしねえ」

苦笑交じりに言った店長は、その口調でかなり年上のように思える。

しかし見た目は静嵐とあまり変わらない位に映った。

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