護り人.27


背伸びをして伝う水を拭う霄瓊の後ろから、明るい声が掛かる。

「おっ、静嵐!どうした、水に落っこちたのか?お前でもドジる事なんてあるんだなあ!」

湧碕は心なしか楽しそうに二人の様子を見守りながら続けた。

「気を付けてくれよな!人が溺れ死んだ水を飲むのは御免だぜ」

「えっ、静嵐……。泳げないんですか?」

真面目に尋ねた霄瓊に、湧碕が勝手に答える。

「霄瓊ちゃん、人間誰しも得手不得手があるもんだぜ」

「そ、そうですよね。無事で良かったです」

「…………」

いつの間にか泳げない事は決定事項になっている。

その上霄瓊が更に続けた。

「それにしても今日はついてないですね、静嵐。お腹を壊して溺れるなんて。お腹を壊してしまったのは私のせいですけど」

「おっ、静嵐!お前腹下しなのか?何だ何だ、涼しい顔して踏んだり蹴ったりだな。厄日ってヤツかもな!元気出せよ、このこの!」

普段なら不快に思う騒々しさもそれ程気にならないのは、きっと。

胸を占める別の何かがあるからだ。

それは何も語らない少女の寝顔と、何も知らないあどけない微笑み。





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