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今では時雨は、生徒会長を務めた為か学校一人気がある存在になって。

クラスで特に目立つ事も無い夏雪は廊下を歩く度にきゃあきゃあ言われる姿を見て、凄いと目を見張るばかりだった。

そんな様子を見てしまえば、話し掛けるのも益々気が引ける。

チョコレートを渡すなどとんでもないと思えてしまう。

けれど今年は、どうしても渡さなければ。

渡して、伝えなければ。

高校を卒業したら、二人は別の大学に進学する事が決まっていた。

別々の学校に通うのは始めてで、そうなればもう会うのも難しくなる。

だから今年はきちんと言わなければ。

そう思って、ちゃんとチョコレートを準備して来たのに。

放課後になっても廊下に溢れる女子生徒の長蛇の列に、夏雪は居心地の悪さを感じて、結局渡せないまま教室を出てしまった。

昇降口の辺りで待っていようかとも思ったが、そこでは既に時雨の靴箱に自分の包みを入れようといがみ合う女同士のドラマが展開されていた。

夏雪はその尖った空気に身をすくめ、時雨の隣の靴箱からいそいそと自分の靴を出して外に出てしまった。



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