08
俺は黙ったまま、ポケットから次のライブのチケットを取り出して羽衣に渡した。
「これは?」
「次のライブのチケットです。これがあれば楽屋にも入れますから。良かったら来て下さい」
「え、いいんですか?」
「はい。もしかしたら俺達は出会うように定められていたのかもしれない。だから君に俺の音楽を聴いてもらいたいんです」
そう言って微笑んだつもりだったけれど、ちゃんと出来ていたのだろうか。
君が一瞬だけ戸惑うような瞳をしたから、あまり上手くは笑えていなかったのかもしれない。
それでも羽衣は優しい瞳で頷いてくれた。
「分かりました。必ず聴きに来ますね。幸希さんの音楽を」
「有り難う。待っています」
手を差し出すと、羽衣は躊躇いながらも白い手で握り返してくれる。
その小さな手は温かくて、不意に懐かしさがこみ上げた。
それは玲歌とライブハウスから手を繋いで帰った、あの温もりと同じで。
何かが、終わったと思っていた何かがまた始まるかもしれない。
そんな予感がした。
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Reservoir Amulet