lovelabyrinth.32


「……蒼?どうかしたの?」

「ああ、いや……何でもない」

自分で考えた事が信じられずに何処かぼんやりとしていると、華憐はまだ音楽の続く広場の方に顔を向けた。

「私、側にいてなんて言っちゃったけど。蒼、戻ってもいいよ?私の話はもう終わったし、蒼と踊りたい女の人は沢山いるでしょ?」

「華憐は戻らないのか?」

「私、ダンスって何だか苦手で。なるべく避けて通るようにしてるの」

「……あんた、仮にも王女だろう?」

思わずそう言うと、華憐は困ったように首をすくめる。

「そうなんだけど、何が楽しいのか分からないから。お城でも何回かダンスパーティーがあって私も出た事があるけど、楽しいと思えたのは一度も無かった。お母様も、いつか分かる時が来るって言って教えてくれなかったし」

拗ねたようなその仕草がひどく子供っぽく見えて、蒼は苦笑した。

男女が手を取り合って踊る時に交わすものが何なのか分からないというのは、華憐らしい気がする。

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