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城の外へ出て茨の茂みの間を歩き出そうとした時、ライオスはアウローラの目を手で覆った。

「……?」

「すみません、ローラ。しばらくはこのまま歩きましょう」

二人の為に道を開ける茨。

それはかつて動かぬ鉄条網の役目を果たし、多くの亡骸を此処に残したのだ。

そんな光景を見せる訳には行かない。

そう気遣っての行動だったが、アウローラは敏感に何かを感じ取ったようだった。

ライオスの手を逃れ、素早く辺りを見回す。

数多くの骸を目の当たりにし、凍り付いたように動かなくなる。

気を失うのではないかと危ぶまれる程に、肌の色が白くなる。

それでも、アウローラは目を逸らさなかった。

やがて、その唇が声を出さずに動く。

私のせい、と言ったように思えた。

「貴女のせいではありません。全て、貴女が眠っている間に城へ侵入しようとした者達ですよ」

ライオスの言葉に、アウローラは激しく首を振る。

そして、亡骸に向かって深く頭を下げた。

長い髪にその顔が隠れる瞬間、白い頬に一筋の涙が光っているのが見えた。

まるで、かつてこの地で息絶えた者達への弔いの美酒のようだ。

それは、蒼玉の瞳から流れる宝石の雫。

見ず知らずの存在の死に対して、これ程澄んだ涙を流せる彼女ならば。

ライオスは、祈りを馳せるように空を見上げた。

限り無き優しさは、精錬されて光を増すかもしれない。

何があっても揺らがない輝きを貫く強さを手に入れるかもかもしれない。

悪足掻きとして続けて来たこの旅さえも。

もしかしたら、無駄にはならないかもしれない。





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