04


氷月と神無が出会ったのは、まだ山々が青々と色付く暑い日だった。

小さな小屋の薄い布団の上で目覚めて最初に目に映ったのは、微笑む娘の姿だった。

「良かった……!気が付いた」

ほっとしたようにそう言ってから、手を伸ばして額に触れる。

「熱も大分下がったみたい。何か食べられる?」

「…………」

まだぼんやりとしている頭で、それでも警戒の目を向けた。

娘は微笑したまま、安心させるように口を開く。

「私は、神無。貴方は近くの山の中で倒れていたの。ひどい怪我で、熱も高くて。覚えている?」

その言葉に記憶を辿ろうとしてみたが、何も思い出せなかった。

ただ、丁寧に手当てされた傷の痛みが、神無と名乗った娘の語る内容は本当だと知らせる。

起きようとした体も恐ろしく弱っているようで、思うように力が入らなかった。

神無が慌てて支えながら尋ねる。

「あの、貴方の名前は?」

「……何も思い出せないんだ」

正直に告げると、神無は一瞬目を見張った。

怪しまれるか、突き放されるか。

それとも憐れみの目を向けられるか。

そう思った時、神無が不意に顔を覗き込んで来た。

「それなら、氷月」

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