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凍り付いた冷たい心を、そっと包んで溶かすように。
言葉は沁みる。
奥深くまで、沁み渡る。
「知っている貴方も知らない貴方も、私は大好きです。お父さんも勇さんもひかりさんも翼さんも……皆。皆、氷月さんが大好きなんですよ」
『私、貴方を……ほんの少ししか知らないままだったけど……。それでも知っている貴方も知らない貴方も、全部……全部大好きだよ』
自分が生きている意味を問い質す時に、出会う優しい人。
暖かな人達。
自分は、なんて恵まれているのだろう。
躊躇いがちに手を動かして、微かに震える神無の肩に触れる。
「……有り難う、神無」
生きている限り、後悔を繰り返すかもしれない。
けれどそれでも、譲れないものはある。
この温もりを、自分は失えない。
激しい願望が燃え上がる。
守りたいと。
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Reservoir Amulet2