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「…………」
神無はしばらくの間、何も言わなかった。
気が付くと鐘の音も止んでいて、喧騒が聞こえて来る。
けれど、それさえも遥か遠くの事のようだ。
長い懺悔を終え、氷月は黙ったままの神無に目を向けた。
彼女が何を思っているのか、その表情からは読み取れない。
「ごめん。怒った……よね」
すると神無は激しく首を振った。
瞳から涙が溢れ、すぐに頬を伝う。
しかし氷月が戸惑うより先に、温もりが体を覆った。
何が起きたのか分からない内に、結い上げた黒髪が驚く程近くにあった。
神無に抱き締められている。
現状を理解するまでに、数秒を要した。
月光色の飾り玉が、視界に映る。
呼吸を鼓動を体温を、衣服越しに感じる。
「氷月さん」
離れようとせずに、神無が口を開いた。
朱月と呼ばれた過去を聞いても、彼女はそう呼んだ。
「これまでに何があっても、貴方は貴方です」
泣いている為に僅かに揺れる声が、静かに響く。
「氷月さんのこれまでの全てを、哀しさや苦しさ全てを私に理解する事は出来ません。でも、私は知っています。貴方の優しさを、暖かさを」
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Reservoir Amulet2