22


「…………」

神無はしばらくの間、何も言わなかった。

気が付くと鐘の音も止んでいて、喧騒が聞こえて来る。

けれど、それさえも遥か遠くの事のようだ。

長い懺悔を終え、氷月は黙ったままの神無に目を向けた。

彼女が何を思っているのか、その表情からは読み取れない。

「ごめん。怒った……よね」

すると神無は激しく首を振った。

瞳から涙が溢れ、すぐに頬を伝う。

しかし氷月が戸惑うより先に、温もりが体を覆った。

何が起きたのか分からない内に、結い上げた黒髪が驚く程近くにあった。

神無に抱き締められている。

現状を理解するまでに、数秒を要した。

月光色の飾り玉が、視界に映る。

呼吸を鼓動を体温を、衣服越しに感じる。

「氷月さん」

離れようとせずに、神無が口を開いた。

朱月と呼ばれた過去を聞いても、彼女はそう呼んだ。

「これまでに何があっても、貴方は貴方です」

泣いている為に僅かに揺れる声が、静かに響く。

「氷月さんのこれまでの全てを、哀しさや苦しさ全てを私に理解する事は出来ません。でも、私は知っています。貴方の優しさを、暖かさを」

- 102 -






[*前] | [次#]

しおりを挟む


ページ:



Reservoir Amulet2