02


研究室のドアをノックする音に、書類から顔を上げる。

「どうぞ」

返事をするとドアが開き、白衣を着た神無が入って来た。

「ああ、何だ。神無か」

「はい。実験のデータを持って来ました」

「ごくろうさん」

デスクの上にファイルを置いた神無は、暫し立ち尽くす。

「どうした?」

「あの、お父さん。私……」

言い掛けて口ごもり、考え直したように首を振る。

「いえ、何でもありません」

「何だ、悩み事か?氷月と喧嘩でもしたのかー?」

「そうじゃありません。では、私は失礼します」

笑顔を浮かべた神無が、頭を下げて部屋から出て行く。

再び一人になった室内には、静かな空気が満ちている。

「何かあったのか?」

鏑の呟きは、静けさの中に溶けて行く。

たった今立ち去った娘が無理に笑っている事位、すぐに分かった。

その纏う雰囲気も、普段とは違う。

何処か弱々しい、すぐに消えてしまいそうな。

折れてしまいそうな細い茎の花、溶けてしまいそうな雪。

そんな儚い雰囲気には覚えがある。

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Reservoir Amulet2