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神無が此処に来たばかりの頃。

出会って間もない頃。

彼女はいつも、儚い雰囲気を纏っていた。

時が経ち、少しずつ打ち解けてくれて。

笑顔を見せてくれるようになって、お父さんと自然に呼んでくれるようになって。

家族になってくれて。

消えそうな雰囲気も少しずつ薄らいで行った。

それでもあの頃、神無が何も話さず一人泣いていたのは覚えている。

どうして涙が出るのか自分でも分からないまま、孤独な痛みに耐えていた彼女を。

鏑は思い出しながら息をついた。

神無が僅かとはいえ以前に戻ったようなのは、きっと変化が訪れたからだ。

その変化をもたらしたのも、涙の理由を分かち合えるのも。

「氷月……なんだろうな」

見守る事しか出来ないのはもどかしくもある。

しかし、彼等を信じるのもまた自分の役目だ。

然るべき時が来たなら、何も隠さず語るというのも。





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