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季節は巡る。
春はやって来る。
彼女と過ごした事の無い季節が。
自分の部屋のベランダに出た氷月は、暮れて行く空を見上げた。
まだ風は冷たく肌を刺すけれど。
時は止まらず、季節は巡る。
視線を空から下へと移すと、並ぶ建物が見える。
時を越えてまで、生きている。
その事実を、最初はこの景色で知った。
この街並みは、暮らす人々は至って平穏そうで。
戦いなど無いように見えるけれど。
敵の見えない戦いを選んだ人達がいる。
時を越えて残り、受け継がれ。
永遠に残って行く美しい人の想いが世界を築くのならば。
同じように、人の悪意が力を持ってしまう事もあるのではないか。
優しく暖かな心だけでは、人は語れない。
憎しみも嫌悪も、殺意さえ。
人の心は確かに生み出せるのだから。
そんなものが、例えば世界の片隅に。
影のように淀み溜まり、凝り固まれば。
それを操り統べる事が出来たら。
世界を創り続ける美しい想いを喰い尽くし、壊して。
全てを影が支配する、そんな事さえ出来るのかもしれない。
そうするだけの欲望を、意思を持つ者を、知っているから。
そんな事は、させない。
時を越えてまで、生きている。
それはきっと、この為だ。
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